帯状疱疹の臨床像:神経走行に一致して水疱が帯状に集簇,配列して認められる.帯状疱疹と診断するためのキーワードは「片側性」,「痛み」;「帯状配列」である. | 帯状疱疹の組織像:表皮内水疱が認められ,その内容にはウイルス感染により変性した表皮細胞〜巨細胞が含まれる.ウイルス感染による表皮細胞の変性は風船様変性balooninig degenerationと呼ばれ,特徴的な形態を示す. |
水痘−帯状疱疹ウイルス(水痘および帯状疱疹の原因ウイルス)の他に,単純疱疹ウイルスT型(おもに口唇ヘルペス),単純疱疹ウイルスU型(おもに外陰部ヘルペス), EBウイルス(伝染単核球症),サイトメガロウイルス(病原性は低いが,たとえば胎児に感染した場合の先天性巨細胞封入体症), ヘルペスウイルス6(突発性発疹)があります.
帯状疱疹の原因ウイルスが水痘と同一というのがポイントです.すなわち,帯状疱疹は水痘に罹患を契機に神経細胞に潜伏したウイルスが,なんらかのきっかけで神経を伝わり皮膚の表皮細胞に感染し発症します.従って,水痘に罹患していなければ,帯状疱疹にはなりません.
基本的に帯状疱疹は再発しないとされていますが,統計的に約1%の患者が2回以上帯状疱疹に罹患しています.これらの患者さんは白血病,悪性腫瘍,膠原病などの基礎疾患を患っていることが多く,免疫機能が低下すると再発しやすいと考えられています.しかし,健康な人でも2回以上帯状疱疹にかかることはあります.
上に述べたように,帯状疱疹は体の中の神経細胞に潜伏したウイルスが活性化されて発症するので,帯状疱疹が帯状疱疹として伝染することはありません.しかし,水痘に罹患していない幼児などには水痘の原因になることはあり得ます.
帯状疱疹などの特効薬とされるアシクロビルはヘルペスウイルスが誘導するチミジンキナーゼでのみリン酸化されてアシクロビル3リン酸となり細胞のDNA合成を阻害します.したがって,ウイルスに感染していない細胞ではアシクロビルは活性化されず,宿主細胞のDNA合成を阻害することもありません.すなわち,非感染細胞に対しての細胞毒性は極めて低い薬剤ということがいえます.
帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹が抱える最も煩わしい合併症です.統計的に帯状疱疹後に神経痛が6ヶ月以上持続するのは1.7%程度といわれ,ほとんどが60歳以上とされています.この神経痛は患者にとって極めて苦痛なものであり,帯状疱疹の治療は帯状疱疹後神経痛を残さないことに集約しているといっても過言ではありません.帯状疱疹の患者が以後に神経痛を残すか否かは治療を開始する段階では分からないわけですから,例え軽症にみえても早期に十分な治療をすることは患者にとって有益なことと考えます.事実,アシクロビル登場以来,帯状疱疹後神経痛の患者はかなり減少したといわれています.