Net4U 特集 「ヒューマンネットワークとNet4U」
慶應義塾大学総合政策学部 専任講師 秋山 美紀
初めてNet4Uの存在を知り、鶴岡を訪れてから、4年半が経ちました。最初の訪問時は、Net4Uユーザーの先生方にお話を伺いましたが、とにかく楽しみながら使っていらっしゃるのが印象的でした。当時のヒアリングメモの一部です。
「以前に比べると患者さんのことがすごくよくわかるようになった。同じ病院内のカンファレンスのように軽い気持ちで他の医師の意見を聞けるのが最大のメリット。」(上野寿樹先生)
「実は連携する楽しさもある。開業医は自分の専門以外を知る機会があまりないので、他の医師の所見を見るのは勉強になる。」(福原晶子先生)
「非常に風通しのよい仕組みだと思う。何人かの医者にかかっている患者さんの場合、誰が主治医かわからないような場合もある。」(中村秀幸先生)
私はこの頃、国のIT政策に関わる教授のもとで報告書の作成等を手伝っており、各地の医療情報システムの運用実態を調査していました。当時、医療ITには業務効率化や安全性向上といった病院内のメリットとともに、組織を超えた情報共有や連携を実現してくれるという期待がかかっており、国も地域医療連携とITの利用促進を並行して推進していました。しかし、地域医療連携のためにITを活用する取り組みは苦戦しているところが多く、たとえばNet4Uの構築の足掛かりとなった経済産業省「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業(平成12年度補正事業)」の補助を受けた27地域を見ても、運用を継続できているプロジェクトは数事例にとどまっていました。
結局、数少ない成功地域のひとつである鶴岡においては、どのようなシステムを導入・運用し、どのような効果を上げているのかを検証することが、自身に課せられたミッションだと感じるようになり、その後、特に在宅医療における医師と訪問看護師のコミュニケーションにについて調査・分析をさせていただきました。
私が鶴岡に通い始めてからずっと、Net4Uは衰退するどころか、鶴岡地区の地域医療連携の発展とともに、成長・進化してきました。その理由はどこにあるのでしょうか?
第一に鶴岡地区医師会の情報化への積極的な取り組み、第二に市立荘内病院の他施設との連携強化が挙げられると思います。鶴岡地区のように医師会が地域の病院を巻き込んで積極的に情報化と地域連携を推進している例は全国的にも稀です。医師会は開業医を中心とした医師の集まりであり、病院勤務の医師は医師会活動に無関心というのが通例です。しかし鶴岡地区のNet4Uには、医師会傘下の施設以外に、地域の中核医療を担う荘内病院も参加しています。特に荘内病院の医師の参加は、大腿骨頸部連携パス、そして緩和ケア普及のための「庄内プロジェクト」によって大きく進みつつあります。
そしてもう一点、重要なことは、長年にわたり地域に協働と信頼の基盤が醸成されてきたことでしょう。4年半前のインタビューで、湯田川温泉リハビリテーション病院の竹田浩洋院長はこう話しておられました。
「もともとこの地域には協働の伝統があった。三十年前に私が東京から来たとき、病院と地元医師会の交流が盛んで驚いた。きっとお互いの顔が見えるから、それが大事なんだと思う。」
今日、医療の現場は、患者の住み慣れた自宅、あるいは介護施設などへ広がっています。特に高齢者のケアや緩和ケアでは、かかりつけ医、専門医、訪問看護師、介護職種、リハビリを行う作業療法士、そして病院の地域連携室のスタッフやソーシャルワーカーなど多くの職種が関わり、互いに連携する必要があります。こうした連携をスムーズにするツールとしてNet4Uの輪がさらに地域に広がっていくことを期待しています。
慶應義塾大学総合政策学部 専任講師 秋山 美紀
初めてNet4Uの存在を知り、鶴岡を訪れてから、4年半が経ちました。最初の訪問時は、Net4Uユーザーの先生方にお話を伺いましたが、とにかく楽しみながら使っていらっしゃるのが印象的でした。当時のヒアリングメモの一部です。
「以前に比べると患者さんのことがすごくよくわかるようになった。同じ病院内のカンファレンスのように軽い気持ちで他の医師の意見を聞けるのが最大のメリット。」(上野寿樹先生)
「実は連携する楽しさもある。開業医は自分の専門以外を知る機会があまりないので、他の医師の所見を見るのは勉強になる。」(福原晶子先生)
「非常に風通しのよい仕組みだと思う。何人かの医者にかかっている患者さんの場合、誰が主治医かわからないような場合もある。」(中村秀幸先生)
私はこの頃、国のIT政策に関わる教授のもとで報告書の作成等を手伝っており、各地の医療情報システムの運用実態を調査していました。当時、医療ITには業務効率化や安全性向上といった病院内のメリットとともに、組織を超えた情報共有や連携を実現してくれるという期待がかかっており、国も地域医療連携とITの利用促進を並行して推進していました。しかし、地域医療連携のためにITを活用する取り組みは苦戦しているところが多く、たとえばNet4Uの構築の足掛かりとなった経済産業省「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業(平成12年度補正事業)」の補助を受けた27地域を見ても、運用を継続できているプロジェクトは数事例にとどまっていました。
結局、数少ない成功地域のひとつである鶴岡においては、どのようなシステムを導入・運用し、どのような効果を上げているのかを検証することが、自身に課せられたミッションだと感じるようになり、その後、特に在宅医療における医師と訪問看護師のコミュニケーションにについて調査・分析をさせていただきました。
私が鶴岡に通い始めてからずっと、Net4Uは衰退するどころか、鶴岡地区の地域医療連携の発展とともに、成長・進化してきました。その理由はどこにあるのでしょうか?
第一に鶴岡地区医師会の情報化への積極的な取り組み、第二に市立荘内病院の他施設との連携強化が挙げられると思います。鶴岡地区のように医師会が地域の病院を巻き込んで積極的に情報化と地域連携を推進している例は全国的にも稀です。医師会は開業医を中心とした医師の集まりであり、病院勤務の医師は医師会活動に無関心というのが通例です。しかし鶴岡地区のNet4Uには、医師会傘下の施設以外に、地域の中核医療を担う荘内病院も参加しています。特に荘内病院の医師の参加は、大腿骨頸部連携パス、そして緩和ケア普及のための「庄内プロジェクト」によって大きく進みつつあります。
そしてもう一点、重要なことは、長年にわたり地域に協働と信頼の基盤が醸成されてきたことでしょう。4年半前のインタビューで、湯田川温泉リハビリテーション病院の竹田浩洋院長はこう話しておられました。
「もともとこの地域には協働の伝統があった。三十年前に私が東京から来たとき、病院と地元医師会の交流が盛んで驚いた。きっとお互いの顔が見えるから、それが大事なんだと思う。」
今日、医療の現場は、患者の住み慣れた自宅、あるいは介護施設などへ広がっています。特に高齢者のケアや緩和ケアでは、かかりつけ医、専門医、訪問看護師、介護職種、リハビリを行う作業療法士、そして病院の地域連携室のスタッフやソーシャルワーカーなど多くの職種が関わり、互いに連携する必要があります。こうした連携をスムーズにするツールとしてNet4Uの輪がさらに地域に広がっていくことを期待しています。