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トップ  >  編集後記(県医師会会報誌 2010年12月)
 今年度の日医医療IT委員会は、ORCAプロジェクトと日医認証局について答申するよう諮問されており、二つのワーキンググループ(WG)に分かれ議論を重ねているところである。私は認証局WGに属しているので、認証局について少々触れてみる。

 認証局については、多くの会員がそのイメージをつかめていないのではないかと思う。私自身詳しいわけではないが、その概念を少々解説させていただく。例えば、ワープロで書いた診療情報提供書(紹介状)をインターネットで紹介先医療機関へ送信する場合を考えてみる。もちろん、紹介状をメールに添付して送ることは簡単なことではある。しかし、それだけでは、その紹介状を医師本人以外が送信したとしてもそれを見破るすべがないし、そもそも、デジタルファイルは公文書とはみなされないので、それを印刷したりコンピュータに保存したりしても法的には認められない。このようなデジタルファイルが医師本人により作成されたことを保証し、法的に認められるようにするために必要なのが電子署名である。すなわち、電子署名は、紙の文書における署名と印鑑証明書付きの実印による捺印に当たるものと考えて良い。この電子署名を発行するところが認証局である。また認証にはその人の資格も含まれる。したがって、認証局は公に信頼された組織である必要があり、「医師」、「本人」であることを証明するためには厳密な資格審査も必要となる。

 日医としては、医師の資格を与えるのは国であったとしても、「医師」や「本人」であることを審査して、認める(認証する)のは、第三者に委ねるべきではなく、日医が責任をもつべきだとして日医認証局を進めてきた。すでに開発や実証実験は終わっており、今後は、会員にICカードを発行し、実運用を目指す段階に来ている。しかし、現実問題として医療のIT化は遅れており、紹介状や処方箋などをデジタルファイルとしてやり取りしたり、医療連携ネットワークを介して患者情報を共有したりするなどのシステムはまだまだ一般的ではない。一方で、会員へICカードを発行し、認証局を継続して運営していくためには、毎年5000万円以上の予算が必要とされ、会員の理解が欠かせない。認証局WGでは、日医認証局は必要という意見が大勢を占めているが、認証局はなぜ必要か、なぜ日医がやらなければいけないか、というそもそも論から始まり、運営費をどう考えるべきか、非会員の認証はどうするのか、ICカードの価格をいくらに設定すべきかなどの課題について議論を深めているところである。