山形県会報誌 編集後記
三原一郎
2007年10月号
三原一郎
2007年10月号
安倍首相の突然の辞任劇にはびっくりしました。体調不良だったとはいえ、一国のリーダーとしてはちょっと情けないな〜という感覚は皆さんもたれたのではないでしょうか。安倍内閣を引き継いだ福田氏、飄々とした受け答えは個人的には好感をもっていますが、小泉前内閣が進めてきた改革路線の負の遺産、とくに医療を含めた社会保障抑制策を今後どう舵取りするのか、医療側にいるものとして、多少の期待を込めて注視しているところです。
ところで、特定健診 ・ 特定保健指導は、来年4月より実施されることになっていますが、それに伴い、基本健康診査(基本健診。多くの場合、市町村が地区医師会に委託し地元の開業医が実施していた)が廃止されることを知らない人が多いのではないでしょうか。基本健診は、とくに内科系開業医にとって、少なくない収入源になっていたと思われますが、基本健診が廃止され特定健診に変わったからといって、診療所が簡単に特定健診を受諾するわけにはいかないのです。というのは、この特定健診は、保険者との複雑な契約形態、インターネットでの情報公開、さらには電子化した健診データの保険者への報告義務など、診療所単独で対応するのは難しいとされているからです。特定健診は健診業者が実施するものとあきらめるのか、あるいは、診療所でも受諾できるよう何らかの方策を 考えるべきなのか、医師会の対応が問われていると思います。
このように、特定健診 ・ 特定保健指導という制度は、メタボ対策というだけではなく、今まで医療機関が担ってきた基本健診の受け皿を、民間へシフトする「健診の民営化」という側面も持ち合わせているのです。市場は、特定健診だけで年間約3000-4000億円、特定保健指導においては毎年約1兆円とも言われています。その相当部分が医療機関から健診業者へ流れるわけですので、少なくとも医療機関にとっては小泉 ・ 安倍改革路線の負の遺産ともいえます。