山形県医師会報誌 編集後記
三原一郎
2003年6月
三原一郎
2003年6月
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、ようやく鎮静化の方向にあるようですが、今回のSARS騒ぎ、われわれ医療関係者にいろいろな意味で教訓を与えたのではないかと思います。
そのひとつは、われわれ医師にとって、インターネットはすでに必須の情報伝達の手段であるということです。SARSへの対応に関しては、厚労省、日医などから頻繁に情報が流されました。しかし、日医→県医師会→地区医師会という従来のFAX等による月2回程度の情報伝達手段では、最新の情報まではとても伝えきれないと、今回のことで実証されたように思います。デジタルデバイド(情報格差)の解消は、今後重要な課題と考えます。
県医師会では、従来の伝達方法のほかに、県医のホームページにSARS関連情報のリンク集を公開し、重要な情報があった場合には花笠MLにて広報するよう努めました。しかし、花笠MLの加入率は高々10%程度です。迅速な連絡網としてインターネットを活用するには、より多くの会員が花笠MLに参加することが必要と痛感しております。
また、情報を流せばそれで済むという問題ではないことも実感しました。例えば、実際にSARS可能性患者が受診してしまった場合、具体的にどう行動するのか。その対応は日医と各地区医師会に温度差がありました。患者が受診したらなるべく診察するようにとの通達が日医から出ていますが、マスクすら入手できない現状で、実際に患者が来院してしまったら閉院すら余儀なくされる一般診療所としては、日医のマニュアルに素直に応じるわけにはいかないという本音もあったと思います。情報を地域の中で活用するためには、情報を流すだけではなく地区医師会が率先して行動する必要性を感じました。
今回のSARSに対する各地区医師会の対応はさまざまです。その対策についてきちんと話し合い、会員への周知に努めた医師会もあります。一方、日医や県からの情報を単に会員に流しただけの医師会も多かったのではないかと思います。国、県、日医の対応は迅速かつ的確とはとても言えなかったことを考えると、本来最前線で地域の医療を守るべき立場にある各地区医師会が、その姿勢を問われた“騒動”だったのではないかと考えさせられました。