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トップ  >  山新提言(2004/3)

山形新聞 提言:医療費の節約



2月19日付、本紙朝刊に、「医療費:節約は工夫次第」という記事が掲載されました。「軽症なら大病院は避ける」「なるべく診療時間内に受診する」など、なかなか賢明な助言がありました。しかし、「医師に数カ月分を処方してもらい、薬局で薬剤師に体調や副作用について相談しながら1カ月ごとぐらいに薬を もらう」という工夫は看過できないと感じました。


このような工夫が、医療の本来あるべき姿とは思えません。投薬も医療行為のひとつです。診察や検査値などを参考に、医学的見地で行うのが基本です。慢性疾患における長期投薬も、症状が安定しているという医師の判断のもとに行われるものです。一方で、医療行為の結果については、医師にその責任が課せられています。


もちろん、薬剤師、看護師などのいわゆるコメディカルとの協調、連携も極めて重要であり、その役割を軽んじているわけではありません。たとえば、薬剤師による服薬指導や副作用、重複投与のチェックなどは、医療行為の補助として当然尊重されるべきです。しかしながら、紙面で紹介されているような「医師に長期投与を求め、薬剤師に相談しながら薬をもらう」という工夫は、医療の原点である患者と医者との信頼関係を損ないかねない行為であり、患者の安全を守るという観点からも、到底勧められる方法ではありません。


ところで、日本の医療費が先進国の中で、対GDP比は最低であることをご存知でしょうか。一方で、日本の医療は世界最高の平均寿命と世界最低の乳児死亡率を達成しております。国が先進国中最低の出資しかしていないのに、世界最高の平均寿命を成し遂げたのは、国民の誰もが平等に、安い医療費で、どの医療機関へも自由に受診できる皆保険制度によることが大きいと考えられています。


しかし、少子高齢化、医療技術の進歩などによる医療費の高騰が問題視されるようになると、国は、医療費を抑制するために、患者には負担増を求め、保険点数の引き下げなどで、医療機関にも痛みを押しつけています。さらに、病院経営への株式会社の参入、保険外診療の拡大などを検討しています。このような経済優先の医療制度改革は、患者の負担増を招くばかりでなく、国民が平等に医療を受けられるという権利をないがしろにし、健康を金で買う時代へと向かわせいく可能性があります。このような、国民の健康を危険にさらすような医療制度改革には、われわれ医師会は断固反対の立場をとっています。


先の紙面で述べられていたような医療費節約の工夫も、生活の知恵として必要なことかもしれません。しかし、目先の節約より、わが国の医療を含めた社会保障への出資は先進国中最低でありながら、医療費高騰の負担を患者へ求め、さらには医療が平等に受けられなくなるような医療制度改革を推し進めようとしている、政府の方針に危機感を持って欲しいと思います。