山形県会報誌 編集後記
三原一郎
2006年2月号
三原一郎
2006年2月号
昨年末、診療報酬の引き下げ幅が過去最高の3.16%(本体、1.36%、薬価部分 1.8%)と決められました。事前報道では、意図的とはいえ、本体で4%前後の引き下げかとのアドバルーンが上がっていたわけですので政府、厚労省、日医などそれぞれの面子を保った、政治的決着というべき数字なのでしょう。
それを受けて、1月末には、厚労省より平成18年度診療報酬改定(骨子)案が公開されました。改定案のポイントは、1.投薬料、検査料などの医療費の内訳が分かる領収書の発行を医療機関に義務づける。2.後発医薬品の使用の是非を示すよう、処方せんの様式を変更する。3.病院への患者の集中を是正するため、現在は病院よりも高い診療所の初診料を下げる一方、再診料はともに引き下げる。4.医療費抑制などのため、現在は大学病院を中心に適用している入院医療費の定額払い方式をその他の病院にも大幅に拡大する、などと報道されています。
このなかで、医療費の内訳が分かる領収書(明細書)の発行を巡っては、花笠MLはじめ他のMLでも話題となっています。明細書を発行すること自体は、患者サービスの向上や医療の透明性の確保という意味でも、当然進めるべきと考えますが、支払い側や政府が要求している全患者へのレセプト並みの明細書の発行義務化となると多くの問題があります。まず、現在の診療報酬算定のルールでは患者に説明し難い点数が多々あり、現場での混乱を招きかねません。また、明細書を発行するための設備投資や手間をなぜ医療機関側が負担しなければならないかという問題もあり、医師会としても、すんなり了承するわけにはいきません。現在の骨子には医師会側の主張通り、「求めがあれば発行する」とされていますが、支払い側や政府は、全患者への発行の義務化を強く主張しており、予断を許さないというのが現状のようです。
ところで、明細書の発行については、以前、広報戦略会議での医師会のイメージチェンジという議論の席上で、患者にとって良いイメージを与える試みであるから、医師会が積極的に主導して推進すべきではないかと私から発言したことがあります。それに対して、植松会長は、例えば指導料などの問題があり、明細書を出すことで医療機関に迷惑がかかってはならない。まずは、診療報酬算定ルールの抜本的解決が必要との認識を示しました。確かにそうなのですが、イメージアップ戦略としては、例えば、日医から会員へ向けて、「なるべく明細書は発行するように」という通達文書でも出せば、マスコミや国民の医師会を見る目も、また、違ってくるのに。反対ばかりでなく、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、とも思うのですが・・・、そうもいかないのでしょうね。