皮膚癌早期発見のためのQ&A
Q.癌というと、なってしまったら、治らないのではないかという、とても恐いイメージがあります。一方で早期発見すれば、完全に治せるといわれいますが、本当でしょうか?
癌は一晩でできるわけではありません。生命を脅かすような癌に成長するには2―3年はかかるといわれています。この危険な癌に成長する前に発見できれば、癌は完全に治すことができるのです。とくに、皮膚の癌は目でみえるわけですから、皮膚癌の初期像をよく理解しておけば、癌を早期に発見することは比較的容易です。とくに、上皮内癌といわれる病態は、癌の前駆症ともいえるもので、この時期であればどんなに悪性な腫瘍でも完全に治すことができます。Q.上皮内癌についてもう少し詳しく説明してください。
上皮内癌とは上皮(皮膚では表皮)に限局した癌のことです。すわなち、表皮という皮膚の表層で始まった細胞の反乱が表皮だけを占拠し、他へは侵攻しないでいる状態です。表皮は、体の中では防衛線の外にある完全地帯であり、反乱軍がここでとどまっている限り生命に対する危険はないのです。しかし、放置すると、反乱軍は表皮を突き破り体の中へ入り込みリンパ管や血管を伝わり内臓へ侵攻を始める可能性があります。したがって、この反乱軍がまだ表皮という安全地帯にとどまっている状態を見つけだし、これを摘み取ってしまうことで、完全に治すことができるのです。Q.上皮内癌にはどうな種類があるのですか。
皮膚の上皮内癌には次のようなものがあります。Q.癌(悪性)と癌でないもの(良性)との、見分けかたを教えて下さい。
・ 日光角化症
・ ボーエン病
・ パジェット病
・ 上皮黒色腫
表に示したような事項が鑑別点になります。
良性 悪性 大きさ 小さい(1-2cm以下) 大きい 形 対称性 非対称生 境界 明瞭 不明瞭 辺縁 平滑 不規則 潰瘍、壊死 ない ある 増殖速度 緩徐 急速
Q.こんな症状があったら、皮膚科を受診した方がよいという、ポイントを教えて下さい。
・ 長い間治らない、かさかさ、ジクジクした皮膚病がある。
・ 湿疹といわれて治療したがさっぱり治らない。
・ いつまでも治らない傷がある。
・ 鉛筆の太さより大きい黒〜褐色のしみがある。
・ 乳首、陰部、腋窩に治らない湿疹がある。
・ 皮膚のなかにしこりがあり徐々に大きくなる。
さいごに一言。
どんな悪性腫瘍も一晩でできるものではありません。完治可能な時期(通常1〜2年間)が必ず存在するのです。とくに、皮膚腫瘍の場合外から観察でるのですから、診断能力さえあれば必ず発見できるはずです。すべての国民が定期的に皮膚科専門医に診察を受けていれば、皮膚癌で亡くなる人は劇減するものと確信するものです。気になる皮膚症状があったら、皮膚科専門医をたずねてみて下さい。
(文責:三原一郎)
最終更新日:1996/10/30