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かいせん(疥癬)

ヒトヒゼンダニの表皮角質層への寄生による伝染性皮膚疾患です。第二次世界大戦直後、本邦で大流行しましたが、衛生環境の向上、殺虫剤の使用とともに鎮静化しました。しかし、1975年頃より再び増加傾向がみられています。この原因として、海外旅行ブーム、殺虫剤使用が少なくなったことなどがあげられています。
さらに近年の高齢化社会に伴う、(疥癬虫が生息し易い)寝たきり老人の増加や、訪問〜通所サービスの充実による感染機会の拡大により、疥癬は蔓延状態と言っても過言ではないほど、老人施設などで一般的にみられる感染症となっています。
右の写真は、顕微鏡でみられた疥癬虫。体長は0.2-0.4mmで、肉眼での検出は困難です。
●症  状
乳幼児から老人に至るまでどの年齢層にもみられますが、近年は寝たきりの高齢者や、老人施設の看護師や介護者に多くみっれます。症状は指間、手指背面 、陰茎、陰嚢などに強いかゆみを伴う丘疹や小水疱 とされていましたが、高齢者の場合は、腹部、腋窩などの小紅斑〜丘疹としてみられることが多いようです。かゆみは特に夜間に強い傾向があります。症状が進むと症状は全身に拡がり 、「湿疹」や「掻痒症」などとの鑑別は必ずしも容易ではなく、誤診され不適当な治療を受けている場合も少なくありません。

手指間の長さ数ミリの線状診(疥癬トンネル)、陰嚢、腋窩の暗褐色結節は疥癬を強く疑わせる臨床所見です。また 、同居者あるいは同僚に同症がいるかなどの病歴も診断の一助になります。

近年は、疥癬虫が生息しやすい寝たきり老人の増加や、介護サービスの普及による患者、介護間のピンポン感染の機会が増えたことにより、疥癬は、蔓延している状態にあるといえます。
●感染経路
接触感染のほか、寝具、下着などを介して広がり、しばしば、老人施設、家庭、老人病棟、寮、職場などで集団発生します。
●疥癬対策のポイント
 ・ 健常人の疥癬の多くは自然治癒する

 ・ 疥癬の重症化例のほとんどは寝たりきり老人

 ・ 集団発生はノルウエー疥癬の見逃しから

 ・ 疥癬の媒介は医療、介護関係者

 ・ 疥癬の治療は自家製の外用といえど、医師の指示が必須

 ・ 疥癬を見逃さない

 ・ 皮膚科医との連携

 ・ 正しい知識のもとでの常識的な対応

 ・ 意味のない患者差別は慎む
治  療クリックで講演で使った「疥癬の治療」が閲覧できます
γ-BHCローション注1)、,安息香酸ベンジル、10%クロタミトン軟膏(オイラックス)、イオウ剤(ムトウハップ注2))など、適切な治療を行えば通常2-3週間で軽快しますが 、家族など同居人をいっせいに治療する必要があります。また、ふとんをよく干し、シーツ、パジャマ 、下着などは頻回に洗うなど皮膚から離れた虫の駆除も必要です。また、最近はイベルメクチン(商品名ストロメクトール)という内服薬が使えるようになり、比較的簡便に治療できるようになりました。
注1:殺虫剤です。医薬品としては認められていませんが、医師の責任の元、外用剤として使われています。疥癬虫対する効果は最も高いといわれています。

注2:湯の花ともいわれ薬局で容易に手に入ります。浴槽にキャップ3杯程入れて入浴します。疥癬虫が硫黄に弱いことを利用した治療剤です。効果はγ-BHC、安息香酸ベンジルに劣ります。

(文責:三原一郎)
最終更新日:2005/1/4
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