メインメニュー
リンク
ログイン
|
白癬と新しい抗白癬菌剤
|
|
足白癬の臨床像:趾間を中心に掻痒を伴った落屑、紅斑、侵軟病変が認められる。比較的定型的な足白癬であるが、この例とて接触皮膚炎など湿疹病変を皮疹のみで否定できるわけではない。 |
白癬の組織所見(PAS染色):角質層内に白癬菌が菌糸として多数認められる(上の写真では、赤く糸屑状に観察される)。ここでみられるように白癬菌は角質層で繁殖し、それを越えて表皮や真皮内へ進入することはない。 |
ご存じのように、白癬は真菌の一種である白癬菌の皮膚感染によって生じる極めてありふれた皮膚病です。白癬菌はどの部位の皮膚にも感染しますが、とくに足、股、殿部などじめじめした部位に好発します。従来、足の白癬は汗疱状白癬(みずむし)、陰股部のそれは頑癬(いんきんたむし)、体部に生じたものは斑状小水疱性白癬(ぜにたむし)などと呼ばれてきました。しかし、これらは部位の違いだけの同一疾患であることから、近年は足白癬、股部白癬、臀部白癬、体部白癬など部位+白癬とする病名がより一般的です。
●白癬の診断はそれほど容易ではない
さて、白癬、とく足白癬を診断するため目安として、 趾間の浸軟落屑病変がある、小水疱や膿疱が足底に認められる、片側性である、環状の配列を示す、夏に悪化するなどいくつかのポイントが挙げられますが、汗疱状皮膚炎、掌蹠膿疱症、接触皮膚炎など白癬以外の皮膚病を皮疹のみで鑑別するのはときに極めて困難です。とくに、患者自身が水虫と思い込んでいて「先生、水虫だから薬くれや」と来院したときは、先入観も手伝って誤診してしまうことは多々有り得ます。 また、初診時足白癬であったものが、治療しているうちにいつのまにか菌は消失し、湿疹の状態になっていてなかなか治らないと訴える例にも時々遭遇します。 水虫の診断やその経過観察には顕微鏡検査で真菌要素を確認することを習慣づけたいと思います。水虫で来院した人の1/3は他の病気というデータもあるそうです。
●新しい抗真菌剤について
抗真菌外用剤においては従来のエンペシド、マイコスポールで代表されるイミダゾール系抗真菌剤の全盛期から、ここ2ー3年の間に新たな作用機序をもつ多数の薬剤が相次いで発売されました。また、グリセオフルビンしかなかった経口抗真菌剤にも新たにイトラコナゾールが加わり、さらには白癬に対する効果が優れ、将来グリセオフルビンに取って代わると期待されている塩酸テルビナフィンも近く発売の予定とのことで、白癬に対する治療の選択肢もずいぶん増えました。これら最近発売になった新薬はまとめて表に示しましたが、これら薬剤のin vitroにおける抗真菌活性はかなりの進歩をとげており、臨床上においてもin vitroのデータ程ではないにしろ有効性は増しているようです。「水虫は治らない」というのは昔の話しで、水虫はそれなりにきちんと治療すれば治るとういう認識を医師自身が確信し、自信をもって患者さんを説得できる時代になってきた気がします。
●表:最近発売になった抗真菌剤
|
系列 | 一般名 | 商品名 |
外用抗真菌剤 | ベンジルアミン系 | 塩酸ブテナフィン | メンタックス(科研製薬) ボレー(久光製薬)
|
| イミダゾール系 | 塩酸ネチコナゾール | アトラント(エスエス製薬) |
|
| ケトコナゾール | ニゾラール(ヤンセン協和) |
|
| ラノコナゾール | アスタット(ツムラ) |
| アリルアミン系 | 塩酸テルビナフィン | ラミシール(ノバルティス) |
| モルフォリン系 | 塩酸アモルフィン | ペキロン(杏林製薬) |
経口抗真菌剤 | イミダゾール系 | イトラコナゾール | イトリゾール(ヤンセン協和) |
| アリルアミン系 | 塩酸テルビナフィン | ラミシール(ノバルティス) |
| トリアゾール系 | フルコナゾール | ジフルカン(ファイザー) |
|