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いぼは乳頭腫ウイルス感染症
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手に多発した尋常性疣贅:尋常性疣贅は四肢末端、とくに手指に好発し、しばしば癒合して乳頭状局面を形成する。 |
尋常性疣贅の組織像:過角化を伴って乳頭状に隆起を示す。表皮上層には空胞化した細胞が散見され、顆粒層は肥厚し、隆起部尖端には柱状に不全角化が認められる。 |
前回のヘルペスウイルス感染症に引き続き、もう一方でよくみかけるウイルス感染症であるいぼ(医学用語は疣贅)の話をしたいと思います。疣贅の「疣」、「贅」ともに「余分なもの」との意味だそうですが、疣贅のつく病名としては老人性疣贅、尋常性疣贅、青年性扁平疣贅などあります。このなかで老人性疣贅(脂漏性角化症という病名がより一般的)以外は乳頭腫ウイルスの感染症です。したがって、いぼといった場合、皮膚科領域では一般に乳頭腫ウイルス感染によるいぼのことを意味します。
●いぼの多彩な臨床型は乳頭腫ウイルスの型により規定される
さて、ご存じのようにいぼはさまざまな臨床像を呈します。尋常性疣贅は最も一般的なもので、手指や足底に好発し、乳頭状の硬い丘疹や結節の形態をとりますし、青年性扁平疣贅では文字どおり平に盛り上がった丘疹で顔面、手背に好発します。一方、尖圭コンジロームでは柔らかい乳頭状丘疹が定型疹であり、ほとんどが外陰部に生じます。従来、このような臨床型の違いはウイルスの感染部位に依存しているのではないかといわれていました。しかし、近年のウイルス解析の飛躍的な進歩により、このいぼの形態の多様性は乳頭腫ウイルスの性格の違いによることが分かってきました。すなわち、乳頭腫ウイルスには多数の亜型があり、どのタイプのウイルスが感染するかにより臨床像が異ることが分かってきたのです(表)。
●瘢痕を残すような治療は原則として控える
いぼの治療には現在もっともポピュラーな液体窒素を用いた冷凍療法を含め、ブレオマイシン局注、電気焼却、ヨクイニン内服、ポドフィリン液やステリハイド(固定液)の外用、暗示療法などさまざまな方法があります。どの治療を選択するかは、いぼの病型や程度、医療機関の設備などによりますが、「疣贅は跡形もなく治ってしまう病気である」という認識は大事です。すなわち、ほとんどのいぼはいずれは痕を残さず消えてしますものであり、切除や電気焼却など治療自体で瘢痕を残す治療法は避けるのが原則と考えます。
●ミルメシア疣贅とは
ミルメシア疣贅とは聞きなれない病名かもしれませんが、比較的ありふれたいぼの一型ですので少し解説を加えたいと思います。このいぼは通常のいぼとは異なり、単発であること、孤立性であること、痛みや炎症症状を伴うこと、足底に好発することなどを特徴とし、組織学的に特異的封入体を証明することで確定されます。 乳頭腫ウイルス1型の感染症です。 このいぼの場合、痛みを訴えて来院するので通常の冷凍療法では痛みに対する効果が期待できず、 前述の原則とは異なり切除が最良の治療法である場合があります。
●表:いぼの病型と対応する乳頭腫ウイルスの型
病 型 |
乳頭腫ウイルスの型 |
尋常性疣贅 |
2,4,41 |
青年性扁平疣贅 |
3,10,28 |
疣贅様表皮発育異常症 |
5,8,9,12,14,15,17,19-25 |
ミルメシア疣贅 |
1 |
尖圭コンジローム |
6,11 |
足底嚢腫 |
60 |
ボーエン様丘疹症 |
16,33,34,39,55 |
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