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じんま疹:一過性の皮膚の洪水
膨疹とよばれる浮腫状の皮疹が2ー3時間で消退することがじんま疹の診断的特徴である。それ以上持続する膨疹は「じんま疹様」と形容され、じんま疹とは区別して考える。 通常のじんま疹では軽度の炎症細胞浸潤がみられるのみで、組織学的所見には乏しい。一方、持続時間の長いじんま疹様の皮疹では好酸球を含む炎症細胞浸潤が真皮浅層から深層までみられる。
●じんま疹は一過性の皮膚の洪水
じんま疹とは、血管の外に水が溢れ出た一過性の皮膚の洪水状態といえます。血管という堤防には、緊急時に備えて水を外に排出し、さまざまな外的物質を中和させるという働きがあります。例えば、蜂など刺された場合、血管から水を溢れ出させ毒素を中和しようと働くわけです。この血管の透過性を調整している細胞が血管の周囲に多数存在する肥満細胞です。肥満細胞からはさまざまなケミカルメディエーターやサイトカインが分泌されますが、ヒスタミンは最も重要な血管透過性亢進物質です。すなわち、多くのじんま疹での最終反応は肥満細胞の脱顆粒→ヒスタミンなどの分泌→血管平滑筋に存在するヒスタミンレセプターを介しての血管の透過性の亢進→膨疹の形成とういうことになります。では、なぜ肥満細胞が脱顆粒を起こしてしまうのでしょう。その機序には様々なものが存在します。例えば、肥満細胞の表面に存在するIgE抗体を介してのアレルギー反応(抗原として食餌、薬剤、吸入物などがある)、直接肥満細胞を刺激して脱顆粒を起こさせる物質(アスピリンは有名)の摂取、温熱、寒冷、掻破、日光などの物理的あるいは外的刺激などです。
●じんま疹の原因証明は困難
しかし、実際はじんま疹患者で原因が証明されることは稀なことです。とくに1ヶ月以上じんま疹発作をくりかえす慢性じんま疹においては、肥満細胞を中心とした警報システムが不安定な状態にあり、ちょっとしたことで肥満細胞が脱顆粒し、じんま疹発作が起こってしまうとしか説明できない症例がほとんどです。例えれば、火事の見張り番である煙探知機が、たばこの煙程度で異常と勘違いしてスプリンクラーから水が出てしまう状態に似ています。一般にいわれるような肝障害など内臓病変が内在し、じんま疹がでるなどは極めて稀なことです(ウイルス性肝炎の初期にじんま疹様の皮疹がでることは知られていますが、これは純粋なじんま疹とは異なる)。とはいっても、上に述べたような原因〜誘因を十分問診し、必要があれば検査、確認しておく必要性は申し上げるまでもありません。
●じんま疹の治療の基本はよく病気の性格を説明すること
ところで、じんま疹、とくに1ヶ月以上もじんま疹の発作を繰り返している慢性じんま疹の患者さんは、薬を止めると皮疹が再燃してしまうので、どこか内臓が悪いのではないか、大変な病気を患ってしまったのではないかと不安な気持ちに陥っています。既述したようにじんま疹においては、一部の稀な例を除いて内臓疾患が潜在していることはなく、内服薬のきちんとした服用で十分コントロールされること、いずれは治ってしまう病気であることを十分説明し、安心して治療を続けてもらうことが肝要と思われます。